ディズニーのマーケティング戦略について、①新規とリピートの獲得法・②ターゲット設定・消費者思考に立った商品について解説していきます。
「ディズニーのすごい集客」という本を参照して要約していますので、気になった方は本もぜひ読みんでみてください。
無意識にリピートさせる「パスポート戦略」
ディズニーのマーケティングですごいところは、来園前からすでにリピートする仕組みが出来ているところです。
購入も体験もする前から2回目が約束されている…それは「パスポート戦略」です。
ディズニーのリピート戦略に関わるパスポートは大きく3つに分けられます。
- マルチデーパスポート
- 年間パスポート
- アフター6パスポート
それぞれについて解説していきます。
マルチデーパスポート
遠方から泊まりで来るターゲットにリピートしてもらうのが、マルチデーパスポート。
ディズニーには、通常の「ワンデーパスポート」以外にも、「ツーデイパスポート」「スリーデイマジックパスポート」「フォーデイマジックパスポート」が用意されており、これらの複数日続けて入園するパスポートを「マルチデーパスポート」と呼びます。
もう、お分かりでしょうか。
旅行でディズニーに来る多くのゲストは、来園前からツーデイ・スリーデイなどのパスポートを購入してディスニーへやってきます。
遠方から来るゲストにとっては、金銭的にも時間的にもディズニーに遊びに来るのは大変です。であれば、翌日リピートしてもらおうと考えるのがもっとも堅実な方法なのです。
年間パスポート
年間パスポートは、その名の通りハードリピーターの為のパスポートです。
私自身ディズニーでキャストとして働いていた経験があり、周りに年間パスポートを持っている友人も多いのですが、年間パスポートを持っていると「ちょっとお茶しにディズニー」など、ごく気軽にディズニーへ遊びに行く人が多いです。
アフター6パスポート
アフター6パスポートは、夜18時〜入園できるパスポートです。
他の2つのパスポートと違い、購入前からの確約になってはいないですが、気軽なリピート支援としての役割を果たしています。
ディズニーの日帰り圏に住んでいる人が、学校帰りや仕事を早めに上がって来園するのに使われています。
私自身ディズニーでキャストをやっていた経験がありますが、高校生や大学生が授業の終わった後に入園してくることが多かったです。
ディズニーの新規顧客開拓施策とは?
続いて、ディズニーが実施した、新規顧客を開拓する為のマーケティング施策について解説します。
トライアル客(見込み客)を増やす為に有効な手段としては下記2つです。
- 購入意欲をあげ優位性を高める(商品力を高める)
- 価格でお得感を出す
この「トライアル」をディズニーが実施するのは、化粧品などサンプルを配ることができる商品に比べ、難易度がかなり高いです。
ディズニーが全国でトライアルを実現した施策とは?
解説していきます。
全国のショッピングセンターで行った「TDRへの旅フェア」
なんとかしてまだディズニーに来園したことがない地方に住む方に「トライアル」をしてもらえないか…。
そこでディズニーが考えたのが、全国のショッピングセンターで行う「TDRの旅フェア」でした。
【TDRの旅フェアの内容】
- ディズニー情報誌のサンプリング
- ステージでディズニーイベントの紹介
- ホテルのセールスマンによる、ホテルごとの特徴の紹介
- 小さな子供連れでも楽しめる遊び方の紹介パネルの設置
- キャラクターパネルとのフォトロケーションの設置 など
先に結果をいうと、このTDRの旅フェアは大成功に終わります。
フェア当日は、ショッピングセンター内にある旅行会社でディズニーへの旅行申し込みが絶えることはなく、当日配布したチラシに掲載されている旅行商品への申し込みは1ヶ月続きました。
なぜ、旅フェアが新規顧客獲得できたのか?
旅フェアが成功した理由は、フォトロケーションやイベントのパネルを見ている子供の笑顔を見て、親は十分にトライアルが出来たから、です。
テレビでディズニーが紹介されている時以外は、なかなかディズニーランドの映像をじっくりみる機会はありません。
キャラクターやディズニーランドの映像を、目を輝かして見る子供の様子から、こんなに好きだったのか、と再発見した方も多くいらっしゃったそうです。
こうして、旅フェアでトライアルが出来たターゲットたちは「ディズニーの旅行に申し込もう」となったわけです。
トライアル施策で重要なのは、クロージング
このトライアル施策の裏で実施した、もう一つ重要なポイントがあります。
それは、フェアを見てショッピングセンター内の旅行会社に行ったお客さんに「ファミリーにおすすめ」「カップルで行くなら!」など、おすすめのプランが一目でわかるようにしておいたことです。
ディズニーでの旅行に限らず、「トライアルで買いたい気持ちになったけど、どれを買えば良いかわからない」「どこに売っているかわからない」という状態は重大な機会損失です。
ディズニーが行った「旅フェア」では、商品作り、プロモーション、販売場所と全てをマーケティングして、ゴール(ディズニーの旅行を予約してもらう)までの道筋がきちんと敷かれていました。
ディズニーの「ターゲットに合った商品作り」
ディズニーでは、集客を増やす為の商品づくりにも力を入れています。
「ディズニーランド」という商品自体は同じですが、パッケージや付帯するサービスなどを変えることで、ターゲットごとに異なる商品を生み出しています。
一例として、ディズニーが女子大生の集客を増やす為に実施した商品づくりについて紹介します。
生の声でわかった意外な事実
まずは、女子大生の生の声を聞くべく、調査を開始します。
調査していく上で、友人を誘ってディズニーに行くタイミングは大きく3パターンに別れることがわかりました。
ディズニーが好きな友人2~3人で行く。
イベントを見ることが主目的で、友人とその良さを共感したい。
予算:特になし
ゼミやサークルなど、女友達5〜6人と旅行。
目的はディズニーに行くことではなく、みんなで楽しみ思い出を作ること。
予算:1人2万円以内。興味がない友達も安価ならOKしてくれる。
その情報を知った時に一緒にいる友達orその情報を共有した友達と行く。
お得に行くことが既に目的の一つ。
予算:設定されたお得な料金。
ターゲットは同じ女子大生でも、誰と一緒に行くか・何をきっかけに行くかによって、目的も予算も大きく変わってきます。
ターゲットから商品を考えるときは、消費パターンまで調べた上で、どのパターンを狙うのかを考えていく必要があります。
ターゲットとするパターンを絞り込む
続いて、どのパターンをメインターゲットとして狙うのか考えていきます。
ディズニーでは②の休みに合わせてグループで行くパターンを集客のターゲットとして設定しました。
理由は単純で、もっともターゲットのボリュームが大きいのがそのパターンだったからです。
①や③のパターンでディズニーに行く女子大生も確かにいますが、最も多いボリュームゾーンは②でした。
「usjを劇的に変えた、たった一つの考え方」の筆者森岡さんもおっしゃっていましたが、自分たちが目指す目標に対してボリュームゾーンが小さすぎないかを考えてターゲットを決めることは非常に重要です。
ターゲットへの価値提供は、過去の競合体験から考える
決めたターゲットに対しての価値提供を考える上で、過去の競合での成功体験や失敗体験を聞き出すことによって、消費者心理を引き出すことが可能になります。
女子大生の場合は、過去に似たようなグループで旅行に行ったきっかけや、選ぶ決め手になった要素を聞いていきます。
その中で「コテージなので朝まで騒いでも怒られない」というものがありました。
ディズニーでコテージを用意するのは無理ですが、「朝まで騒いでも怒られない」という消費者ニーズを叶えるべく、商品を作成していきます。
女子大生向けプランの完成
女子大生向けの旅行プランは、女子大生がコテージを選ぶきっかけになった次の4つの要素を盛り込んで作られました。
❷全員で楽しんで、他の友達に自慢したい
❸価格は2万円以内
❹グループの人数は6名から8名
その結果、完成したのが次のプランです。
・車中泊含む2泊3日
・ディズニーまで送迎バスがある提携ホテルを利用し4名〜8名一室
・閉園後ホテルに帰ってからお夜食ブッフェ
・価格は2日間のパスポート込で1万9800円〜
女子大生がグループで旅行する時のニーズが見事に組み込まれたプランになっています。
そして、行きは飛行機・帰りは夜行バスにしたのも、ターゲットである女子大生のニーズが隠されています。
両方とも夜行バスにする方が価格としては抑えられますが、「往復夜行バスは旅行の前日もバイトを休まないといけない」と話していたことを元に、「旅行の前日もバイトを休まなくていい往路飛行機、帰りは時間を気にせず遊べる夜行バス」という訴求でプランを打ち出しました。
結果として、このプランは大成功。前年の6倍近い申し込み数を達成しました。
集客を実現する7つのSTEP
ディズニーに限らずですが、マーケティングでこれらの集客を実現する為に、絶対に抑えなければならないポイントが7つあります。
- 目的
- WHO?誰に
- WHAT?何を
- WHO?誰と
- WHERE?どこで
- WHEN?いつ
- HOW?どのように
これまで、ターゲットや商品づくりについて解説してきましたが、最初に【business objective=目的】を明確にしておくことも忘れてはいけません。
ディズニーの目的は、人々へのハピネスの提供です。
つまりは、夢・感動・喜び・安らぎを与えることが、ディズニーの目的になります。
その他のディズニービジネス・マーケティング本
「ディズニーのすごい集客」以外のビジネス本について、下記の記事にまとめていますので、こちらも併せてご覧ください。