ディズニーの人材育成について、元キャストの立場で率直な意見を語ります。
下記3つの視点から、「ディズニーの人材育成」について考えていきます。
ディズニーと他のアルバイトとの違い
まず前提として、キャストが育つ上で「ディズニー」と「その他のアルバイト」の決定的な違いについて書いていきます。
モチベーションが普通のバイトと違いすぎる
ディズニーでアルバイトをする人の入社時のモチベーションは、普通のバイトとは比べ物にならないほど高いです。

子どもの頃からディズニーキャストに憧れていた!

ディズニーで働く為に上京してきた
…という人がザラにいます。
普通のバイトで「何十年もこのアルバイトに憧れていました!」なんて人、まずいないですよね。
勿論、ディズニーの教育制度でキャストがすぐ1人前になる…のもあるとは思いますが、キャストが皆真面目にトレーニングをクリアしていくのは、「入社前からのモチベーションの高さ」に寄る部分がかなり大きいと思います。
既に理想のキャストのイメージが出来ている
そして大体のキャストは、入社前から「なりたいキャストのイメージ」が出来ています。
これもディズニー独自の強みの一つですね。
過去にディズニーへ遊びに来た経験から、「理想とするキャストのお姉さん・お兄さん」のイメージを既に持った状態で、多くのキャストは入社してきます。
通常の仕事だと、入社後に先輩の姿を見つつ「理想とする自分のイメージ」を形作っていきますが、ディズニーはそれが初めから出来ている分、育成がスムーズに進みやすいのは大きなメリットです。
如何にキャストを夢から醒めさせないか
そんなモチベーション最高潮!のキャスト達に高いモチベーションを保って貰うために、ディズニーがしていること。
それは「キャストすらも夢から醒めさせない」ことだと思います。
ディズニー感満載の面接
キャストへの「ディズニーマジック」は、面接時から始まっています。
面接会場にはディズニーリゾートの映像が流れ、会場にはミッキーのぬいぐるみが置いてあります。
まさに「ディズニー感」満載の面接で、ここから既に「キャストにもディズニーの世界観を体感して貰う」ディズニーの姿勢が伺えますね。
初日の研修はもはやショーを見ているよう
そうして合格すると、初日は本社で入社式と研修があります。
研修ではウォルト・ディズニーやディズニーランドの歴史、ゲスト対応の基本を学びます。
その講義をしてくれるのも、同様にアルバイトのキャスト。
このキャストのレベルが、本当に高い。数時間に渡る研修内容(おそらく台本がある)を全て暗記していて、かつ「ディズニーキャスト」らしい身振り手振りを交えながら解説してくれます。
その姿は、まるでショーを見ているよう。
キャラクターはバックステージでもおもてなし
入社後、バックステージを歩いていると、しばしばキャラクターたちと遭遇します。
そんな時も、キャラクターは手を振ってくれたり、キャストに対してゲストと変わらない対応をしてくれます。
ディズニーで働いていることが実感できる、ちょっと嬉しい瞬間です。
夢から醒めた頃にやってくる本社研修
そして入社から約半年。
「ディズニーで働く」ことが日常になってきた頃に、再び本社での研修が行われます。
そこで再度、ウォルト・ディズニーの考え方やキャスト対応について研修を受け、夢から醒めかけたキャストたちを「ディズニーマジック」に引き戻します。
タイミングも含め、さすが!としか言いようがありません。
高すぎるトレーナーの教育スキル
続いて、ディズニーの教育方法や、トレーナーキャストについてです。
素晴らしい本社の研修キャスト
ディズニーの本社で研修するキャストの質は、本当に高いです。
それもそのはず、彼らはディズニーで働く全キャストから応募を募って、面接をくぐり抜けて選ばれた「キャストが憧れるキャスト」たち。
研修の内容を完全に覚えているのは勿論、表情や視線の配り方まで完璧です。
最低3年以上の勤務が必要「トレーナーキャスト」
これは職種によって大きく変わるようですが、アトラクションキャストの多くは、3年以上働かないと、後輩に研修をする「トレーナー」にはなれない、という暗黙の了解がありました。
時給 1000円のアルバイトとして、週5日働く状態が3年以上なので、本当にディズニーが好きな人でないと難しいです。
そして3年以上働いたキャストの中でも、トレーナーになるのはほんの一握り。
3年〜5年でトレーナーになれるのは、10人に1人くらいの割合でしょうか。
ディズニーで「研修する立場」になるのは、例えアルバイトといえど「狭き門」なのです。
トレーナーの教育方法
教育方法については、他の多くの本でも書かれているので、簡単に箇条書きにします。
- 必ず「お手本」を見せる
- 挨拶を大切に、話し掛けやすい雰囲気づくりをする
- おもてなしはマニュアルがない
- 後輩が頼みごとをやってくれたら必ず「ありがとう」
- 注意するときは、良いところも一緒に伝える
特に働き始めた頃は、トレーナーの「お手本」を見て学ぶことだらけでした。
ディズニーの「褒めて伸ばす」制度
ディズニーキャストの中には「褒めて伸ばす」文化が元々ありますが、制度としてもいくつか存在しています。
スピリット週間
ディズニーには、スピリット週間という「他のキャストを積極的に褒めよう!」という期間が年に1回あります。
無記名なので誰が書いたかは分からないんですが、自分のロケーションの数十名から、「こんなところがよかった!」と書いた手紙が届くのは嬉しいもの。
辞めてから今も、大切に取ってあります。
スピリット・アワード/表彰式
スピリット期間の終わりには、各ローケーションで1名〜最大3名ほど「もっとも素晴らしいキャスト」が選ばれます。
スピリットを受賞したキャストは、ミッキーとウォルト・ディズニーのシルエットが入ったピンを貰うことが出来、表彰式にも参加します。
ファイブスターカード
社員が「素晴らしい対応をした」キャストに贈るカード。
このカードを贈られたキャスト限定のショーに参加出来たり(オープン前のディズニーで行われています)、特性グッズが貰えたりと、ディズニーならではの特典も。
「褒めて伸ばす」ディズニーらしい制度ですね。
裏話:ファイブスターカードを巡る不満
裏話ですが、ファイブスターカードを巡る不満感が、特に新人〜入社1年前後のキャストの間にあったのをよく覚えています。
このカード、発行される難易度が大きく違います。
毎日毎日頑張っていてもロケーションの社員から貰えないけど、本社の偉い人が見にくると、ぽんぽんっとその場にいるキャストほぼ全員に配るなんてことも…。
特典がしっかりあって皆欲しい反面、「頑張ってるのに貰ってない」と落ち込むキャストや、「運の要素が強い」「お気に入り人事では?」などの声も耳にしました。
「褒めて伸ばす」に基づいた制度でも、評価基準が明確でないと逆効果なケースもありますね。
ディズニーの教育方法は他でも応用できるのか?
最後に、ディズニーの教育方法が他でも応用できるか?です。
勿論、応用できる部分は確かにあると思います。
一方で、もともとのモチベーションの違いなど、「ディズニーだからこそ成り立つ」部分が多くあるのも事実です。
必ずしもディズニーのようにはいかないけれど、ディズニーの教育方法の中で自組織に合うものを、少しずつ取り入れていくことをおすすめします。